モーツァルト晩年(といっても死ぬ3年前 32歳の時)名作、三大交響曲の最後を飾るこの曲は、正式なタイトルとして「終結フーガ付き交響曲」といわれる。ジュピターの副第は、後世になって付けられたものであるが、壮大な性格は、神々の神たるジュピターの名にふさわしい「宇宙」の引合いによく出されるマーラーの交響曲等に比べてこれ程まで小さな楽器編成でありながら「宇宙」を感じさせる曲はこの曲の他にあるまい。
映画「アマデウス」をご覧になった方も多いであろう。貧困の中、ベッドに倒れつつ作曲のペンを走らせようとするが体がいうことをきかないモーツァルト。そこで、口で説明して枕元に座っている同じ作曲家のサリエリ(モーツァルトを毒殺したという切があるイタリーの作曲家)に譜面を書き取らせる。「バスと同じくトロンボーンが鳴りティンパニの頭打ちの後アルトが・・・。」懸命に説明する病床のモーツァルトの頭の中には、まぎれもなく「宇宙」が鳴り響いていた。
第一楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ
ハ長調故、晴朗な響きと力強さを出している。
第二楽章 アンアンテ・カンタービレ
ジュピターという曲はモーツァルトらしくないと言う人もいるが、この緩徐楽章を聴くとモーツァルトらしさにあふれている。弦と管の対話が美しい。
第三楽章 メヌエット・アレグレット
メヌエットとは本来「典雅な宮廷舞曲」。この曲においては、踊りからは随分離れた純音楽という性格が強そうだ。
第四楽章 フィナーレ/アレグロ・モルト
フーガ様式を取り入れた壮大なフィナーレ。特に終結部の三重フーガは、3つの主題「宇宙」を構成、堂々と結ばれている。モーツァルトの全交響曲をしめくくる意味でも、古典派交響曲の頂点という意味でも、記念碑的なすごい曲なのである。
M.O.