曲目紹介

ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 op.98



 ブラームスの音楽というと、髭モジャで眉間にシワをよせた人の重厚でシブイ音楽、という連想をされる方は多いことだろう。そのとおりで、ベートーヴェンの9つの交響曲につづく「第10番」と評された交響曲第1番や、牧歌的なやすらぎに満ちた第2番、さらに英雄的な力強さと悲劇性に溢れた第3番はいずれも重厚な響きが特長である。では今日お届けする第4番はどうか。私のイメージする第4番は、切なさと懐かしさを綴った黄昏の歌である。
 第1楽章冒頭の第一ヴァイオリンのため息のようなメロディー。それをシンコペーションで追う、いや追わずにおれない木管群。何か、進みたい気持ちをやっとのところで抑えている気がしてならない。次第につのっていく音楽は、時折晴れやかな空を見ることもあるが、さらに高まっていき、やがて堰を切って溢れ、こぼれていく。第1楽章からしてこんな具合である。音楽は、譜面に書いてあるとおりをあるがままに奏すべきで、過度の思い入れは時としてその作品自体を歪める、と批評する人はいるが、私はこの楽章を、恩師シューマン(ブラームスが世に出る手助けをしてくれた)の妻クララへの敬愛(もしかしたら恋愛感情)を抑えるに抑えきれず、何かの形に残しておきたい、彼の「音のラブレター」として捉えたいと思う。
 第2楽章は、懐かしさの音楽である。おなじ音型の続くファンファーレのあと、弦楽器のピッチカートにのったクラリネット・ファゴットがこもった響きの灰色の音を出す。ヴァイオリンは期待と憧れを奏しこれに応える。うって変わってはしゃいで見せる第3楽章や、管楽器のみによって示されるテーマを30回にわたって変奏させる第4楽章については、ご来場いただいた皆様のファンタジーにお任せしたいと思う。

 第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ
 第2楽章 アンダンテ・モデラート
 第3楽章 アレグロ・ジョコーゾ
 第4楽章 アレグロエネルジーコ・エ・アパッショナート

 初演は1885年10月25日。これまでの彼の交響曲に比べ著しく内省的であるため、聴衆に受け入れられるか不安があったようだが、結果は大成功。特に第3楽章はかなり好評であったといわれている。

S.Y.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2002