曲目紹介

モーツァルト:歌劇「後宮からの誘拐」序曲KV384



 モーツァルトがザルツブルクからウィーンに移ってからの最初のオペラが、この「後宮からの誘拐」です。この曲は1781年から82年にかけて作曲されましたが、1781年にはザルツブルクの大司教と決裂し、独立した音楽家として活動を始めました。このオペラの作曲を引き受けたのは、経済的に苦しかったことやウィーンにて名前を広めるためもあったでしょうが、このオペラの副題が「ペルモンテとコンスタンツェ」といったことも影響したのではないでしょうか。この頃モーツァルトはウェーバー家の一室に住んでおり、このウェーバー家の三女がコンスタンツェだったのです。このオペラの上演が大成功に終わった後、彼は父の反対を押しきってコンスタンツェと結婚しています。
 物語は、主人公のベルモンテの恋人であるコンスタンツェが、その侍女ブロンデルと、ベルモンテの召し使いペドリロとともに海賊に捕えられ、トルコの大守ゼリムに売られてしまい、ベルモンテが大守の後宮に行くところから始まります。ベルモンテは彼女を救い出そうと後宮に入ろうとしますが、後宮の番人オスミンに追い払われます。オスミンのいない間にベルモンテはペドリロと再会し、ペドリロは大守にベルモンテを建築家として紹介し、大守に仕えることに成功します。そしてコンスタンツェとも再会し、脱走計画をたて、実行することになりました。番人を眠らせることに成功し、いざ逃げ出そうとするとき番人が目を覚まして見つかってしまい、大守の前に引き出されます。ベルモンテは自分の身分を白状しますが、彼の父親が大守の仇であったことがわかり逆効果となってしまいます。ベルモンテはコンスタンツェとともに死を覚悟しますが、意外にも大守は4人を釈放し、皆は大守の寛大さを称え、フィナーレとなります。
 本日演奏します序曲は大きく3つに分けられ、最初は陽気なプレストで、トルコの音楽らしく長調と短調が目まぐるしく交替し、アクセントの強い行進曲風の2拍子で進んでいきます。中間部はアンダンテで、第1幕の最初のベルモンテの登場のアリアを短調にした形で取り入れています。最後に再び行進曲風の2拍子に戻って序曲は終了し、オペラはこの後第1幕へと進んでいきます。

M.T.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2002