曲目紹介

ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 Op.73



 1876年9月、20数年かけてやっとのことで43歳のブラームスは「第1交響曲」を完成させた。そんな彼が、第2番の交響曲を今度は何と3ヶ月で書き上げてしまったのである。
 1877年6月から9月まで、彼は避暑のため南オーストリアのケルンテン地方の景勝の地ペルチャッハで過ごした。そこはアルプスの山々が連なり、水面が海抜440メートルもあるヴェルテル湖畔にある、まさしく山紫水明の地であった。彼はすぐにこの地を気にいった。また、村人への親切さにも感激し、幸福を感じた。そしてその自然から受けた感銘と感激、その喜びはただちに第2交響曲への霊感となってわき上がり、胸をわくわくさせながら作曲しつづけ、3ヶ月語にはその大半を完成させた。尚、彼は1878年に「ヴァイオリン協奏曲」を、1879年には「ヴァイオリンソナタ第1番」「二つのラプソディ」などをともにこのペルチャッハで作曲している。
 初演は完成後まもなく1877年12月30日、ハンス・リヒター指揮のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で行われ、大成功を収めた。特に第3楽章が終わるとものすごい拍手が起こっていつまでも鳴りやまず、この楽章をもう1度演奏させられるほどだった。
 交響曲第2番は4つの楽章とも長調で主題が書かれており、全体的に明るい印象をもつ。ブラームスは、「特にこれは新婚の若い夫婦のために書かれたように明るくて愛らしい曲だ」と得意げに語っている。また内容は、「この作曲は、ただただ青い空、泉のざわめき、太陽の輝き、そして涼しい緑の木陰だ。ヴェルター湖はきっと美しいところに違いあるまい。」と彼の友達のテオドール・ビルロートが言っているように、ペルチャッハの美しい自然を反映して、自由に流れ、生気に満ちあふれたものとなっている。また、作曲技法としては、「第1交響曲」よりもいっそうの主題の統一性がはかられており、整然としている。楽器の使い方も巧みである。
 かように、この曲には様々な新しい点が見られるが、「ブラームスの味わい」だけは他のどの曲とも同じように持っている。

 第1楽章 アレグロ ノン トロッポ ニ長調4分の3拍子
 第2楽章 アダージョ ノン トロッポ ロ長調4分の4拍子
 第3楽章 アレグレット グラチオーソ クッジ アンダンティーノ ト長調4分の3拍子
 第4楽章 アレグロ コン スピリート ニ長調2分の2拍子

Y.M.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2002