曲目紹介

モーツァルト:ミサ曲ハ長調KV317「戴冠ミサ」



 音楽史上の数ある天才達の中で、モーツァルトの早熟ぶりは際立っています。人々がその才能に気付いたのが3歳の頃。父レオポルトから初歩的な音楽教育を浮け、5歳にして早くも最初の作品を作曲しました。その後、協奏曲、セレナードやディヴェルティメント、歌劇、交響曲等、不滅の名作を次々に生み出しました。そして、1791年「レクイエム」の完成を待たずに36才で永眠しました。死因についてはサリエリが絡む説を始め諸説が飛び交い、いまなお論議の的になっています。
 ミサ曲ハ長調KV317は、モーツァルトがザルツブルクで1779年、23歳の時に作曲したものであり、「戴冠ミサ」という名称は、ザルツブルク郊外の聖堂の祭壇上に飾られてある聖母マリア像に1751年に冠がつけられたのを記念するため毎年聖霊降臨祭後の第5日曜日に行われる祝いのミサのために作曲したという言い伝えによるものです。モーツァルトは音楽史上古典後期に位置づけられ、この時代、音楽の行われていた第一の場所は教会でした。ミサ曲とはキリスト教の最も重要な典礼であるミサに用いられる音楽で、聖歌のうちの一定のものに曲をつけたのがミサ曲です。
 モーツァルトの「戴冠ミサ」は、ミサの通常式文であるキリエ(あわれみの讃歌)、グロリア(栄光の讃歌)、クレド(信仰宣言)、サンクトゥス(感謝の讃歌)、ベネディクトゥス(ほむべきかな)とアニュス・ディ(平和の讃歌)からなっています。歌詞はラテン語で書かれており、その読み方は国により、時代により異なりますが、本日は、現在ローマ教皇庁の公認している読み方を基本に採用しています。

H.N.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2002