曲目紹介

ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲



 ウェーバーはロマン音楽の先駆者たる人物です。彼は、ベートーヴェンの時代からの伝統からはずれた新しい技巧を駆使し、この新しい音楽は、後のベルリオーズやマーラーに影響を及ぼし、ドビュッシーやストラビンスキーに驚嘆を与えました。歌劇「魔弾の射手」は、ドイツ国民歌劇の代表作として有名であり、この作品には先ほど述べた新しい技巧が用いられています。
 序曲のなかでもこの手法はクラリネットの低音部とコントラバスのピッチカートの組み合わせの暗く混じり合った響きなどに見つけることが出来ます。
 歌劇のあらすじは、「ボヘミアの伯爵オトカールの領事、狩場監守官クーノの部下に、マックスとカスパルの二人がいて、マックスはクーノの娘アガーテと恋仲である。射撃競技に勝てばアガーテと結婚することが出来るが、敗れてしまう。どうしたてもアガーテと結婚したいマックスは、魔法の弾丸を悪魔ザミエルから魂とひきかえにもらった結果、翌日の競技で見事に標的を射るが、最後に伯爵に白鳩を射るように指示される。射ようとするとアガーテが白鳩は自分を象徴する物だから射てはいけないというが、すでに遅く、弾丸が発射されてしまう。しかし、弾丸はアガーテに当たらず、カスパルに命中する。魔弾を使ったことが発覚し、マックスは追放されるが、仙人の説得により許してもらい、ハッピーエンドとなる。」
 初演は1821年6月18日にベルリンの王室劇場でウェーバー自身の指揮で行われました。幕があがる直前はウェーバー自身が3回も開始の合図をやりなおさなければならないほどの興奮につつまれていましたが、幕があがってからしばらくの間は聴衆にあまり受け入れられませんでした。しかし、10回目の上演のころには完全に受け入れられ、幕がおりた後も誰一人として会場を立ち去ろうとせず、雷鳴のような拍手のなかで大成功を収めました。

H.N.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2002