曲目紹介

ロッシーニ:「セビリアの理髪師」序曲



 ♪ロッシーニ・クレッシェンド♪ってご存じですか?
 クレッシェンドとともにアチェレランドしていく、いかにもイタリアらしい胸のワクワクする・・・、ほら、あれです。
 モーツァルトのなくなった翌年、ジョアッキーノ・アントニオ・ロッシーニはイタリアのアドリア海に面した小さな町で生まれました。したがって、今年はロッシーニ生誕200周年ということになります。彼には子供の頃こそ、劇団員の両親に連れられ旅から旅へと苦労もしましたが、10代でオペラを書くようになってから後は、名声と富とを手に入れ、美食家としても知られ、音楽史上最も恵まれた作曲家のひとりであったといわれています。大変に筆の早い人で、約20年間に40曲近いオペラを書き、イタリアはもちろん、ウィーンでもパリでもたいへんな売れっ子であったようです。異論なく彼はイタリア・オペラの代表的作曲家なわけですが、作曲家としては長命であった彼は、なぜか後半生の40年間、作曲をほとんどやめてしまっています。その裏には意外にも彼のドイツ音楽へのあこがれがあったといわれ、なんとも皮肉なことではありますが、やはり芸術家というのは一筋縄ではいかないようですね。
 さて、「セヴィリアの理髪師」は若いロッシーニを当代随一の喜歌劇作曲家にした彼の代表作であり、当時の人々にはすでによく知られた床屋のフィガロやら伯爵やらのドタバタ劇。モーツァルトの「フィガロの結婚」はこのオペラの後日談にあたります。その序曲は喜劇の幕開けにふさわしい軽快なメロディーで有名です。
 ♪ロッシーニ・クレッシェンド♪とともに今日のコンサートが始まります。ワクワク・・・。

K.O.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2002