ジャン・シベリウス(1865−1957)は、フィンランドを代表する作曲家である。7曲の交響曲の他、交響詩「フィンランディア」、「カレリア組曲」など、フィンランドの自然や文化が影響した多くの管弦楽曲、室内楽曲、合唱曲などを作曲している。リヒャルト・シュトラウスとは同じ時代を生きた作曲家で、ベルリン留学中に「ドン・ファン」の初演を聴いたり、1901年のハイデルベルク音楽祭でリヒャルト・シュトラウスと親交を深めた。
交響曲第2番は、1901年に完成、翌年フィンランドのヘルシンキでシベリウス自らの指揮により初演され、大成功をおさめた。シベリウスの交響曲の中で最もよく演奏される曲であり、東芝フィルでも2005年11月に続いて2回目である。
この曲の持つ暖かな明るい響きは、カルペラン男爵の勧めで家族と訪れたイタリアで書かれた影響ともいわれる。厳寒のフィンランドに比べ温暖で花々が咲き乱れる幻想的な環境は、好奇心とともに不安をもよび、ドン・ファン伝説からの着想を得たフレーズやキリストをイメージした「死」を意識した苦悩が第2楽章に見られる。フィンランドの民族的色彩の濃いこの作品は、当時ロシアの圧政下にあったフィンランド人の愛国的心情の象徴、民族の自由と独立への主張と受け取る解釈もされたが、後にシベリウスはこの解釈を厳しく否定し、政治的意図は全くないことを表明している。
第1楽章 Allegretto
ニ長調の明るい印象の楽章である。弦楽器の伴奏から始まり、オーボエとクラリネットによる軽やかな第1主題が演奏される。主題に呼応するホルンも印象的である。この後のヴァイオリンのユニゾンによる伸び伸びとした旋律、弦楽器のピッツィカートで盛り上がった後、木管楽器による第2主題が演奏されるが、その背後には弦楽器の冒頭の動機を奏でている。断片的なモチーフを少しずつ変化させながら穏やかな和音で終わる。
第2楽章 Tempo andante, ma rubato − Andante sostenuto
A-B-A-Bと2つの主題を2回繰り返す四部形式である。これはシベリウスが多用した形式でもある。冒頭のティンパニの後に、コントラバス、チェロのピッツィカートが続く。ファゴットによる第1主題は、前述のドン・ファン伝説からインスピレーションを得たとされている。盛り上がりが頂点に達して静まった後、急転して慰めにも満ちた第2主題が現れる。これはフィレンツェで得たキリストのイメージといわれる。終盤の木管楽器の激しく不気味なトリルは、ドン・ファンの哄笑を表したものといわれている。
第3楽章 Vivacissimo − Trio. Lento e soave − attacca
ヴィヴァッティシモで速くも朗らかな第1主題と、牧歌的なオーボエによる美しく穏やかな第2主題が奏でられる。やがて第2主題が再現されたものに弦楽器が加わっていき、盛り上がった頂点で第4楽章に休みなく突入する。
第4楽章 Finale. Allegro moderato − Moderato assai − Molto largamente
弦楽器の力強いモチーフと、トランペット、ホルンによる応答による堂々たる第1主題が奏でられる。対する第2主題は、ヴィオラとチェロによる延々と続く不気味な音型を伴奏に、木管楽器を中心とした息の長い流れものとなる。再現される第2主題は1度目よりさらに長く続き、大きく広がり、頂点で長調へ転調する。そして第1主題の動機によって華やかな響きで締めくくる。
コントラバス N.N