曲目紹介

リスト:交響詩「レ・プレリュード」


 フランツ・リスト(1811-1886)は「ピアノの魔術師」とも呼ばれ、超絶技巧を持つピアニストとして現代でも彼を超える者はいないと言われている。また作曲家としてもピアノ向けにオリジナル作品だけでなくオーケストラ作品の編曲などを数多く手がけ、7 0 0 曲以上のピアノ曲を世に送り出した。
ヨーロッパ中に名が知られピアニストとして絶大な人気を誇っていたリストだが、人気絶頂の30代半ばで演奏活動を引退し、本格的に作曲家としての人生を歩み出す。
ドイツ・ワイマールで宮廷楽長として指揮者・作曲家として活動し、交響詩や交響曲などの大規模作品や、歌曲など多数の作品を書いた。交響詩とは標題音楽の一種で、文学や演劇、絵画を標題としてその内容を表現した単一楽章の管弦楽作品であり、リストが創始したと言われている。本日演奏する交響詩「レ・プレリュード」は、彼が3番目に作曲した交響詩であり、次の標題が掲げられている。
『人間の生は、死への前奏曲である。無垢な愛は嵐によってさえぎられ、傷ついた魂は静かな田園において癒しを求める。しかし人は、自らのために戦いへと立ち上がるのである。』
これはフランスの詩人 ラマルティーヌによる詩から引用されているが、この標題はリストがこの曲を作曲し終えた後につけられたものである。1844年〜1845年にフランスの詩人 オートランの詩を題材として
男性合唱曲「四大元素」を作曲していたが、この序曲を作成後、独立した交響詩として「レ・プレリュード」を発表した。その際にこの標題をつけたと言われている。
「レ・プレリュード」は、2つの主題を用いた緩-急-緩-急の4部構成となっている。

【第1部 人生のはじまり―愛】
冒頭のピチカートに続いて、弦楽器がユニゾンで第一主題を奏でる。「死」や「誕生」を想像させるものであり、編成を変えながら徐々に盛り上がっていき、低音楽器による壮麗なファンファーレとなる。
その後、ホルンが第一主題を変形した愛のテーマ(第二主題)を奏で、変奏する。
<第一主題>
<第一主題>
<第二主題>
<第二主題>

【第2部 嵐(苦悩)】
チェロによる、嵐の接近を告げる不吉なメロディから第2部が始まる。嵐が激しくなり、金管楽器のファンファーレで頂点に達した後、木管楽器と弦楽器が第一主題を繰り返し嵐が収まっていく。

【第3部 田園】
ホルンの穏やかな旋律から始まり、木管楽器が次々と牧歌的なメロディを奏で、田園風景を描く。
その後第二主題が現れ、繰り返しながらクレッシェンドしていき、第4部へと進む。

【第4部 闘い】
ホルンとトランペットが第一主題によるファンファーレを奏で、トロンボーンが第一主題の変形をもって応える。
第二主題の変形による経過句を経て全合奏の行進曲となった後、第二主題、第一主題と移行し、クライマックスを迎える。

初演は1854年2月23日 リストが42歳の時、ワイマールに於いて自身の指揮によって行われた。

クラリネット H.M

【参考文献】
福田弥 「作曲家・人と作品 リスト」 音楽之友社
小船幸次郎 解説「リスト・交響詩前奏曲」 全音楽譜出版社
ギイ・ド・プールタレス 「愛の人フランツ リスト」 音楽之友社
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