曲目紹介

ファリャ/バレエ音楽「三角帽子」より抜粋


 ファリャは、1876年にスペイン南西部のカディスという街で生まれました。10代の頃から作曲を始め、27歳の時にコンクールで作曲とピアノの両部門で優勝し一躍時の人に。
その後自分の力を試すために30歳前後でパリに移り、「魔法使いの弟子」の作曲で有名なデュカについて近代作曲技法を学ぶとともに、デュカの紹介でドビュッシーに会い、さらにドビュッシーの紹介でラヴェルやフォーレとも交流を持ちました。
しかし39歳の頃に第一次世界大戦が勃発したのをきっかけに故郷に戻り、“パリで大成功を収めた偉大な作曲家”として歓迎されます。
帰国後に作曲したバレエ音楽「三角帽子」は、当時指折りの指揮者であったスイスのアンセルメにより1919年に初演され、舞台衣装はあのパブロ・ピカソが担当しました。
華麗な成功を収めたファリャですが、元は神経質で内交的な性格だったため、華やかな生活に次第に嫌気が差し、44歳の頃にはグラナダのアルハンブラ宮殿近くに移り、喧噪を離れ落ち着いた暮らしを送りました。
 三角帽子とは、17〜18世紀に欧米で流行っていた、真上から見ると三角形の帽子のこと。当初は王族や民衆の支配者がかぶっていたため“権力の象徴”でもありました。
 曲の内容は、スペインの作家アラルコンが民話に基づいて書いた小説「三角帽子」がベースで、日常の些細な夫婦間の諍いが引き起こす勘違いや和解を明るく描いたものです。
スペインの民族色豊かなリズムが各場面をいっそう生き生きさせています。
元は二幕形式で7曲よりなりますが、本日演奏するのはそのうち4曲の抜粋版です。
 見た目は悪いが働き者の粉屋と美人の奥さんが主人公。その奥さんに目を付けた三角帽子を被った代官が、あの手この手でものにしようと試みるものの、一枚うわての奥さんに翻弄されるのみ。
夜になり、粉屋夫妻は村人たちと踊りながら楽しいひとときを過ごしますが、代官のたくらみで粉屋は警官に無実の罪で連行されてしまいます。その後粉屋の奥さんのもとを訪ねた代官はあやまって小川にはまりびしょぬれになった挙句、奥さんには逃げられる始末。
仕方なくマントと三角帽子を脱いで、乾くまで粉屋の服を着て家の中の暖炉で暖まっていると、警察から脱走した粉屋が戻ってきて家の前にあったマントと三角帽子を見てあらぬ疑いを持ち、代官の服を身に着け復讐に向かいます。
代官をこらしめようとする村人や粉屋の奥さんは、二人の衣装の取り違えに気づかず大騒ぎ。最後には代官がほうほうのていで去っていき、皆喜んでこの地方の踊り「ホタ」に興じ続け、最高潮になったところで幕が閉じます。

ヴァイオリン C.K


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2018