ロッシーニはイタリア生まれの作曲家で、「ウィリアム・テル」を初めとする多数のオペラを作曲しました。ウィリアム・テルはスイスの伝説的な英雄で、オペラでは圧政に対抗する彼の活躍が描かれます。
その活躍譚は後年のスイスの独立運動へと繋がったとも言われており、スイス国内では紙幣や切手のモチーフになるなど今でも愛され続けているそうです。
本日演奏する序曲は描写的な4つの場面から構成され、それぞれが切れ間なく演奏されます。
第4部が特に有名ですが、他の場面もそれぞれに魅力的です。是非各場面の情景を思い浮かべながらお聴き下さい。
第1部 - アンダンテ(夜明け)
ホ短調。5人のチェロ独奏、コントラバス、ティンパニのみで演奏されます。夜の闇が徐々に去り、アルプスの山々が穏やかに朝を迎える様子を表しているようです。
一方、ところどころ訪れる不安感や一貫した静けさは、これから訪れる激しい嵐を予兆しているのかもしれません。
第2部 - アレグロ(嵐)
ホ短調。静かな夜明けもつかの間、弦楽器のせわしない動きに導かれ不穏な風が割り込んできます。
初めは断続的だった風も、複数の楽器が重なりあう中、雷鳴を伴う激しい嵐へと変化します。
しかし、その雷雨もやがて収まりを見せ、静かに登場するフルートの音色が晴れ間の訪れを表しているかのようです。
第3部 - アンダンテ(牧歌)
ト長調。第2部のフルートの独奏に導かれ、イングリッシュホルンののどかなメロディーがスイスの高原にこだまします。
二つの楽器が会話をするかのように始まったメロディーもいずれは重なり、技巧的なフルートのオブリガートがイングリッシュホルンのメロディーに華を添えます。
第4部 - アレグロ・ヴィヴァーチェ(スイス独立軍の行進)
ホ長調。のどかな山間に突如、トランペットから始まるファンファーレが鳴り響き、有名なギャロップ調の行進曲が始まります。
独立のため戦ったスイス軍の行進と、勝利の賛歌です。軽やかなリズムを何度も繰り返しながら高揚し、盛大なフィナーレを迎えます。
チェロ T.Y