「こうもり」はワルツ王 ヨハン・シュトラウス(同名の父親と区別する為に2世と呼ばれています)の代表作と云える作品であり、レハールの「メリーウィドウ」と並ぶオペレッタの名曲です。オペレッタは喜歌劇と訳されたりしますが、軽妙で笑いを伴う愉快な内容のものが殆どです。
なので格式の高いオペラハウス(日本で云えば歌舞伎座みたいなものでしょうか)ではめったに上演されないのですが、この作品だけは例外。
ウィーン国立歌劇場では大晦日に上演されることが恒例となっています。その意味では、数あるオペレッタの中で別格の扱いを受けている作品です。
裕福な男アイゼンシュタインが友人のファルケにあれこれ凝った仕返しをされる、という他愛のないお話なのですが、全編に渡り登場人物たちの楽しい遣り取りが続き、飽きる暇がありません。
気品に満ちていると同時に全幕を通じて引き締まった統一感があるのも魅力です。
パン!パン!パン!(シャンパンを抜く音を表すそうです)という総奏で始まるこの序曲には、全編の聴き処が満載。
美しく賑やか、時にセンチメンタルな旋律が次々と登場し、ワルツ王の名に恥じない極上のワルツも顔を出します。
オーボエのsoloが「あぁ、貴方がいないなんてどんなに辛いことか」とさめざめと泣いてみせるが、「どうせ居ないのであれば楽しい舞踏会へ…」と足は動き出しており、そして小走りから全速力に…、そんな景色を音楽がなぞります。
目まぐるしく替わる舞台上のやり取りを明るい音色でメリハリよく再現し、重心を少しだけ軽くした響きでラテンな気分を醸せたら練習の甲斐があったと云うものです。
真面目な顔して演奏しても、それらしい音は出やしません。キリリと冷えたワインをとひと舐めして舞台へと向かいます!
PS. ご興味を持たれた方は是非、この曲を得意にしたカルロス・クライバー指揮の映像をご覧になってみて下さい。きっとご納得頂けると思います。
ヴァイオリン S.Y