曲目紹介

チャイコフスキー 交響曲第6番 ロ短調作品74「悲愴」


 ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー1840年4月、ロシア帝国ウラル山脈西のヴォトキンスクに生まれました。楽器をたしなむ両親の影響もあってか幼少期から音楽への興味と才能を示していましたが、両親は彼を音楽家にさせるつもりはなかった様です。彼はサンクトペテルブルグの法律学校に10歳で入学、19歳で卒業すると法務省の役人となります。しかし音楽への興味が尽きることはなく、22歳でペテルブルク音楽院に入学、26歳でモスクワ音楽院へ移り、職を辞するまでの12年間、教鞭をとり後進の指導にあたりました。
 決して順調なだけではない人生を経てチャイコフスキーは1893年10月に53歳で亡くなりますが、その間に数々の序曲や組曲・幻想曲、また3大バレエと称される“白鳥の湖”、“眠りの森の美女”、“くるみ割り人形”、そして6曲の交響曲を書き上げました。中でも、本日演奏する交響曲第6番は「悲愴」という副題と共に広く知られています。

第1楽章 Adagio – Allegro non troppo – etc
 コントラバスの深く重い音と、それを追って出てくる苦しげな溜息の様なファゴットの独奏で序奏部が始まります。
 続いて序奏部よりもテンポは速めつつビオラ・チェロから第1 主題が始まります。第1主題は弦楽器と木管楽器が交互に主題を奏でていきますが、曲が進むと共にうねるような音楽へと移り変わっていきます。そしてファンファーレのように金管楽器が鳴り響くと、やがてまた穏やかな音楽へと戻っていきます。
 第1主題の終わりの間を挟み、チャイコフスキーらしい美しい旋律(第2 主題)が始まります。弦楽器と木管を中心としたこの旋律は波打つように繰り返され、最後にはファゴットの「pppppp」の音と共に消えていきます。(本演奏会ではバスクラリネットで演奏します)
 そして、これまでの静けさを打ち破るかのように展開部が始まります。
途中第1主題を挟んで第2 主題が再現され、第1楽章は幕を閉じます。

第2楽章 Allegro con grazia
 5拍子のワルツですが、スラブ音楽にはよく用いられている形式であり、チャイコフスキー自身がこの交響曲と同年に作曲したピアノ曲の中でも用いられています。
 第2楽章は第1楽章を忘れたかのように優雅な音楽が始まりますが、中間部ではティンパニが刻むリズムと共に不安・哀しみを伴った旋律へと色を変えます。そして再び2楽章冒頭の旋律へと戻っていきます。

第3楽章 Allegro molto vivace
 これもまた、第1・2楽章と雰囲気を変えて12分の8拍子のスケルツォから始まります。次第に4分の4拍子の行進曲へ移り変わりながらひたすら前向きに進み、更に後半に進むにつれて力強さを増してゆきます。そして最後には終楽章であるかのようにオーケストラが鳴り響き、華やかに3楽章は終わります。

第4楽章 Adagio lamentoso
 チャイコフスキー自身が「第4楽章はレクイエムの気分に満ちたものである」と述べた通り、第3楽章とはうって変わり、苦しみ・嘆き悲しみに満ちた旋律が流れ出します。
 そして曲の最後、コントラバスのピッチカートが心臓の音を表すように拍を刻み、そして息絶える様に消えてゆきます。

T.N.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2015