曲目紹介

グリーグ  序曲「秋に」作品11


 エドヴァルド・グリーグ(1843 - 1907)といえば、『ペール・ギュント』の“朝” や『ピアノ協奏曲』の冒頭のメロディを思い浮かべる方も多いと思います。いわずと知れた19世紀を対表するノルウェーの作曲家です。グリーグというと何となく管弦楽の作曲家のイメージがありますが、実はピアノ独奏曲や歌曲の方がはるかにたくさんの作品を残しています。
 グリーグが活躍した19世紀後半、クラシック音楽では自国の民族音楽を取り入れようという試みが盛んに行われていました。後に「国民楽派」と呼ばれ、グリーグの他、ドヴォルザークやシベリウスがその代表格です。
 本日演奏する演奏会用序曲『秋に』は、1865年、グリーグが22歳の時に作曲された初期の作品(おそらくオーケストラの曲としては最初の曲)です。作曲当初はあまり良い評価をされなかったようですが、グリーグ自身がピアノ二重奏版にしてスウェーデン学士院のコンクールに応募したところ、見事に首位を獲得し、大作曲家への第一歩を踏み出しました。
 作風はというと、さすがに初期の作品だけに“これぞグリーグの作品”といった雰囲気は少ないものの、冒頭の重厚な響きや、ところどころに垣間見える民族音楽調の美しいメロディは、若きグリーグの情熱が溢れていますように感じられます。音楽の形式は「演奏会用序曲」としているとおり、ゆっくりと壮大に始まる「序奏」と軽快ながらどこか悲しげな雰囲気をもつ「ソナタ形式」といった古典的なスタイルとなっていますが、展開部の転調部分などは、まるで映画のシーンが目まぐるしく変わっていくような躍動感あふれる構成となっています。
 ちなみに、第1主題(ニ短調)はほぼ同時期に作曲された歌曲「9つのロマンスと歌(作品18)」の4曲目『秋の嵐』をほとんどそのまま転用しています。筆者は北欧の秋を経験したことはありませんが、嵐が夏の終わりを告げ、そして嵐が来る度に秋が深まり、やがて冬の訪れを告げる、、、
そんな様子を表現したのではないかと想像します。
秋も深まってまいりましたが、本日は北欧の「秋」をどうぞご堪能ください。

T.Y.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2015