曲目紹介

ストラヴィンスキー:組曲「火の鳥」(1919年版)


 20世紀を代表する作曲家であるイーゴリ・ストラヴィンスキー(1882〜1971)は、20世紀の芸術に広く影響を及ぼした音楽家の1人です。ロシアに生まれ、パリで名声を獲得し、後半生はアメリカで活躍しました。
 バレエ音楽《火の鳥》は、ロシアの芸術プロデューサーであるセルゲイ・ディアギレフからの依頼で1909年から10年にかけて作曲されました。1910年のパリのシャンゼリゼ劇場での初演はストラヴィンスキーにとって最初の大きな成功となり、以後彼はロシア・バレエ団のために《ペトルーシュカ》や《春の祭典》などの傑作を発表しました。
 演奏される組曲(1919年版)は、作曲家自身がオリジナルのバレエ音楽をコンサート用に標準的な2管編成のオーケストラで演奏できる版にまとめ直したものであり、手頃な管弦楽の編成と規模から実演では最も演奏機会の多い版です。ストーリーはロシアの民話に基づいており、以下の様な構成になっています。

「序奏」:
魔王カスチェイの宮殿の庭が舞台です。魔法の木に成る黄金の果実を目当てに、幸運の象徴とされる火の鳥がやって来ます。

「火の鳥とその踊り」:
火の鳥を追っていたイワン王子が現れ、忍び寄って火の鳥を取り押さえます。

「火の鳥のヴァリアシオン」:
火の鳥は自らの黄金の羽根を差出し、イワンに見逃してもらい飛び去ります。

「王女たちの踊り(ホロヴォート舞曲)」:
やがて魔王カスチェイの城から魔法にかけられた13人の王女たちが現れ、黄金の果実で戯れ始めます。そこへ影からイワン王子が突然姿を現すと、王女の一人ツァレヴナと恋に落ちます。しかし、王女が自由になれるのは夜の間だけで、夜が明けると石になってしまうのです。

「カスチェイ王の魔の踊り」:
王子は王女を助けようと決心し魔王の宮殿に乗り込んで行きますが、捕らえられてしまいます。魔王が王子を石にしようとしますが、王子が火の鳥からもらった羽によってそれができません。魔王とその手下達は火の鳥の魔法によって狂った様に躍らされます。

「子守歌」:
踊り疲れたカスチェイ達は、火の鳥の歌う子守歌によって深い眠りに落ちます。

「終曲」:
その後魔王は再び目を覚まし暴れ始めますが、火の鳥の導きにより魔王の魂の入った石を王子が壊したことで、カスチェイの命は尽きてしまいます。こうして石に変えられていた人々は元通りになり、王子と王女は結婚します。華やかなロシアの婚礼のシーンが目に浮かぶようです。

D.S.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2015