ブラームスは真面目である一方頑固でもあったためか、人付き合いが苦手で周りも振り回されていたようです。最大の親友であったヴァイオリニストのヨアヒムが、友人に宛てた書簡の中に「彼ほど自己中心的で妥協を嫌う人物は他にはいない。相手の弱点を直ちに見抜き、そこを徹底的についてしまう。彼の念願はただひとつ、また他人に干渉されずに作曲できることだ。」という記載があったほどです。
10歳からバッハ、ベートーヴェンを中心とした音楽理論をマルクスゼンという音楽教師から叩き込まれていたこともあり、交響曲を作曲するに当たり、形式を完全にマスターしようと長い間曲想を練り、様々な思いや技法をすべて盛り込もうとしたようです。このこだわりの性格のため交響曲第1番は完成までに約20年の歳月を要しました。
一方、本日演奏する交響曲第2番はその翌年の1877年に約4ヶ月で書き上げられました。これほど短期間で次の交響曲を書き上げられたのは、1つは難産であった交響曲第1番からの解放があるでしょう。
もう一つの理由としては、この頃毎年夏になると避暑地で作曲することが常となっており、この曲も南オーストリアのヴェルター湖畔のペルチャッハという場所で作曲されたことがあげられます。
彼の代表作であるヴァイオリン協奏曲もこの土地で生み出されていることが示すように、アルプスの山々に囲まれ、牧歌的な温和な雰囲気を持つこの場所が気に入ったのでしょう。全楽章長調で構成された「ブラームスの田園交響曲」とも呼ばれるこの曲は、このような解放された精神状態から生まれたと想像できます。
第一楽章 アレグロ・ノン・トロッポ ニ長調
冒頭のチェロ、コントラバスによって奏される3つの音「レ−ド#−レ」は基本動機として各所に現れます。続けて牧歌的な第1主題はホルン、木管楽器で示され、その後歌うような第2主題はヴィオラ、チェロで続けられます。コーダではホルンや弦楽の幻想的な響きから次第に弱くなってこの楽章が締めくくられます。
第二楽章 アダージョ・ノン・トロッポ ロ長調
チェロの下降旋律とファゴットの上昇旋律との同時進行で始まります。ロ長調という調性にも拘らずどこか憂いを含んだ主題が続きます。当時の聴衆にはこの楽章はとても神秘的で不可思議に響いたようで、賛否両論があったといわれています。
第三楽章 アレグレット・グラツィオーソ ト長調
オーボエの牧歌的でのどかな3拍子の主題に始まり、途中4分の2拍子の速いテンポで、後半は8分の3拍子でより跳ね回る感じが加わり、最後は穏やかに曲を閉じます。初演のころは特に評判が良かった楽章で、演奏会ではこの楽章のアンコールを要求されたほどでした。
第四楽章 アレグロ・コン・スピリート ニ長調
弦楽器の静かに流れる第1主題で始まり、やがて突然、全管弦楽による強奏となります。繊細さと力強さを併せ持つ生気のある楽章です。コーダは主題に関連した金管楽器のコラール風のフレーズで始まり、エネルギッシュなクライマックスで全曲が結ばれます。
M.T.