曲目紹介

モーツァルト 荘厳ミサ ハ長調(KV337)


 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791年)は、オーストリア ザルツブルグに生まれた古典派に属する大作曲家。5才の時から神童と呼ばれた天才で、交響曲、協奏曲、オペラ、室内楽、教会音楽等、全ての分野で626曲(断片を含むと700曲)の優れた作品を残した。(教会作品は約60曲)
 荘厳ミサは1780年にザルツブルグ大聖堂の復活祭ミサのために作曲され、ザルツブルグで書かれた最後のミサ曲。大司教から、「出来る限り簡略に作曲するよう」に依頼され、言葉の繰り返しを省略して完成された。テキストは、カトリックの典礼文に即している。
 「荘厳ミサ」と呼ばれているが、内容的には「ミサ・ブレヴィス」(簡略ミサ)と位置付けられている。オーケストラはヴィオラの無い構成。オルガン、ファゴットも活躍する、親しみ易さと伝統にとらわれない革新性を兼ね備えた曲となっている。

第1曲  Kyrie(キリエ)(憐れみの讃歌)
オーケストラの流れるような旋律の前奏の後、合唱が歌い始める。
最後は合唱、オーケストラが弱音で終わる。短いが、味わいを秘めている。
第2曲  Gloria(グローリア)(栄光の讃歌)
輝かしく活気に満ちた合唱で始まる。独唱四重唱と交代しながら進んでゆく。
強音と弱音の対照が鮮やかな印象を与える。Cum Sancto Spiritu ~以下は、再び最初の
主題が戻ってくる。
第3曲  Credo(クレド)(信仰宣言)
キリエと同様、流れるような旋律で合唱が歌い始める。アンダンテとなってソプラノ
独唱でEt incarnatus を歌う。続いて受難のCrucifixus では合唱がユニゾンで抑制され
た緊張した響きで歌う。復活の場面は、アレグロとなる。合唱がEt resurrexit と冒頭の
旋律に戻り、シンメトリーの構成となっている。
第4曲  Sanctus(サンクトゥス)(感謝の讃歌 前半)
アダージオで、合唱が輝かしく歌う。強音と弱音が交互に現れ、印象的である。後半は
アレグロに変わりソプラノ独唱でHosannaを歌い、合唱が続く。軽やかで躍動感に
満ちた簡潔な曲。
第5曲  Benedictus(ベネディクトゥス)(感謝の讃歌 後半)
前半はベースが主題を歌い始め、各パートがフーガで続く。厳格なフーガ形式で構成
され、不協和音が随所に表われ、当時としては革新的な手法で作曲された。後半の
Hosannaからはソプラノ独唱が華やかな旋律を歌い、ロマン派の音楽を思わせる合唱が
続き、前半と鮮やかな対照をみせる。
第6曲  Agnus Dei(アニュス・デイ)(平和の讃歌)
モーツァルトのキリストへの祈り、平安の願いがソプラノ独唱で、歌われる。オーボエ
独奏、ファゴット独奏も協奏曲的に参加し、更にオルガンも独奏的に参加する。後半は
合唱と独唱が交互に力強く歌いあげる。最後の結尾は、独唱4部で簡潔に余韻を持って
終わる。

TPC


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2012