歌劇「魔弾の射手」はドイツ語で歌われる、ドイツの民話を題材にした、全3幕のオペラである。1821年に書かれ、オペラにおけるドイツ・ロマン主義を確立した記念碑的作品として知られる。第3幕の「狩人の合唱」及び序曲は特に有名で、演奏会などでしばしば独立に演奏されることがある。
舞台は三十年戦争(1618〜48年)が終わって間もない17世紀半ばのボヘミアの森。狩人のマックスは森林官クーノーの娘アガーテと恋仲にあるが、彼女と結婚するためには領主の御前射撃に成功し、森林官の跡継ぎとして世に認められなければならない。御前射撃を明日に控えた夕方、マックスが農夫キリアンと射撃の腕比べをして敗れる場面で、ドラマは幕を開ける。絶望の淵にあるマックスに、狩人仲間のカスパールが近づき、魔弾を手に入れて射撃に望むよう誘惑する。魔弾は6発までは打ち手の狙ったところに必ず当たるが、7発目は悪魔の欲するところに命中するという伝説の弾丸である。悪魔ザミエルに魂を売っているカスパールは、マックスの命を引き換えに、自らの契約を延ばそうと企んでいたのだ。
御前射撃の当日、アガーテは花嫁衣裳を着て、マックスとの結婚に備えていた。魔弾の効果により、順調に命中させていたマックスだったが、領主に最後の1発で鳩を撃つよう命令され、弾がアガーテの方に発射されてしまう。銃声と共に彼女は倒れるが、それは気絶しただけで、婚礼の花冠によって逸れた魔弾の餌食になったのはカスパールであった。事情を知り激怒した領主は、悪魔と結んだマックスに永久追放を命じる。しかしそこに隠者が登場して領主を諭し、一年の執行猶予をマックスに与えることとなる。一年後、神に背くことなく生きたマックスは、罪を許されアガーテと晴れて結婚することになる。
愛と清く正しい行いによって悪魔が打ち払われるという力強い筋書きと、ドイツ人の伝統と自然の彩りとは、ワーグナーを始めとした次世代の作曲家たちに大きな影響を与えた。序曲の力強く不穏な
メロディーはこれから始まる物語を暗示している。
C.M.