ベートーヴェンは、自分より1才年上のコルシカの英雄、ナポレオンを大変崇拝していました。この曲を書き終わったとき彼は、「ナポレオンに題す」としるして、献呈の日を待っていました。が、ナポレオンのフランス皇帝即位を聞き、「やはり彼もほかの権力者と同じだったのか。やがてあらゆる人権を踏みにじるにちがいない。」と、怒り心頭に発して、献辞を力一杯ペンで抹殺し、力が入りすぎて紙に穴があいてしまったそうです。このように、この曲はナポレオンと深い関係はありますが、ナポレオンの業績や生涯を描いたものではありません。
初演は、1804年に非公開でなされ大成功をおさめましたが、1805年のアン・デア・ウィーン劇場での公開初演は、その長大さのためか、不評であったといわれています。しかし、その後この曲の声価はしだいに確固たるものとなったことは、言うまでもありません。
第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ 変ホ長調 4分の3拍子
変ホ長調の主和音をトゥッティで2回強奏し、チェロが第1主題をのびやかに奏でます。全体は、ソナタ形式ですが、従来に比べて展開部と結尾部が拡大されていることは、革命的です。
第2楽章 葬送行進曲 アダージョ・アッサイ ハ短調 4分の2拍子
交響曲の緩徐楽章に葬送行進曲を用いたのは、ベートーヴェンの独創でした。ハ長調のトリオのあとにくるフーガは、亡き人をしのんで激しい感情が表れていて、聴く者の胸にせまります。
第3楽章 スケルツォ アレグロ・ヴィヴァーチェ 変ホ長調 4分の3拍子
軽快で緊張感のあるスケルツォと、3本のホルンが古い狩りの角笛のテーマを奏するトリオの、明快な複合3部形式をとります。
第4楽章 フィナーレ アレグロ・モルト 変ホ長調 4分の2拍子
フィナーレは、変奏曲が採り入れられています。ベートーヴェンは、この主題となるモチーフをよほど気に入っていたらしく、それまでにバレエ音楽<<プロメテウスの創造物>>他3回用いていました。なお、ベートーヴェンがフィナーレに変奏曲を用いたのは、この曲が唯一であるということです。
C.K.