曲目紹介

ワーグナー 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲



 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は、ワーグナーの楽劇の代表作のひとつとして、有名な作品です。
 ワーグナーは、音楽と文学を結婚させた歴史上重要な作曲家であり、小説や音楽評論、そして自作の歌劇、楽劇のための台本などの文筆活動を積極的に行っていました。しかも彼は、文学の才能、興行的素質を音楽の中で花咲かせ、それらをスケールの雄大な舞台作品として完成させたのです。
 さて、彼自身が執筆した台本によるこの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の物語は、16世紀中頃、南ドイツのニュルンベルクの町を舞台に、靴屋、パン屋などの職人の親方(マイスター)が、それぞれ今でいうシンガーソングライター、つまり、マイスタージンガーとして競い合っていた頃のお話です。ニュルンベルクへやってきた騎士ヴァルターが金細工師の娘エヴァと恋に落ち、彼女に求婚する資格を得るためにマイスタージンガーの試験を受けますが、彼の歌は規則から外れていたので、失格してしまいます。二人は駆け落ちしようとしますが、ヴァルターの歌に魅力を感じた靴屋のハンス・ザックスというマイスタージンガーが彼を助けます。そして、彼は歌くらべで人々に認められ、めでたくエヴァを得ることができました。しかし、ヴァルターは、マイスタージンガーとなることを拒否します。これに対しザックスはドイツのマイスタージンガーの芸術がいかに高く貴いものかうたい、全員の大歓呼のうちに幕がおります。
 本日、演奏いたしますこの楽劇の前奏曲は、コンサートでよく取り上げられる明るく荘重な序曲です。「愛の情景」「マイスタージンガーの行進」「マイスタージンガーの芸術」などワーグナー独特のライトモチーフ(動機)を全曲にくしした、すばらしい劇的な音楽です。その雄大なスケールをお楽しみください。

N.S.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2002