曲目紹介

ラフマニノフ ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18


 この曲はラフマニノフの最高傑作として、広く親しまれています。旋律はロマンチックな情緒にあふれており、しばしば歌詞をつけて歌われたり、ジャズに編曲されたり、 また映画音楽としても用いられるなどポピュラーになっています。
 ロシアの貴族の家に生まれたラフマニノフ(1873‐ 1943)は、ペテルブルク音楽院に入学後、従兄でリストの高弟の1 人だったピアニスト、ジロティのすすめでモスクワ 音楽院に移り、ピアノで第1 位の成績を取り、オペラ「アレコ」の作曲で金メダルを獲得して卒業しました。その後ピアニストとして、また作曲家として名声を築きましたが、1897 年に初演された「交響曲第1 番」が全くの 不評に終わったことで、一時期、強度の神経衰弱に襲われ、作曲はおろか一切の活動から遠ざかってしまいます。そんな彼を救ったのが、精神科医のニコライ・ダール博士でした。博士の「あなたは素晴らしいピアノ協奏曲を作る」 という暗示療法により、病状は徐々に快方へ向かっていきます。そして1901 年、「ピアノ協奏曲第2 番」を完成させました。同年、ダール博士に捧げられたこの曲の初演は、ラフマニノフ自身のピアノとモスクワ・フィルハーモニー 管弦楽団によって行われ、大成功を収めます。この曲により、ラフマニノフは一躍世界的に知られる作曲家となりました。

第1楽章 Moderato ハ短調
  ソナタ形式。 冒頭に独奏ピアノが鐘のような響きの、暗く荘重な和音を8 小節に渡って弾きます。この音型は、ロシア正教会の小さな鐘を模したものです。第1楽章に おいてピアノは、第1 主題の主旋律の進行を完全にオー ケストラ、特に弦楽合奏に委ねています。休みなく繰り広げられるピアノの華麗なパッセージの多くが、オブリガート的な役割となっていることから、聞き手にピアノの超絶技巧の存在を気づかせません。

第2楽章 Adagio sostenuto ホ長調
 3 部形式。 ラフマニノフの抒情性が最もよく発揮された楽章。中間部以下はほとんどピアノの独り舞台で、同一主題をもとにした抒情的発展が行われています。

第3楽章 Allegro scherzando ハ長調
 はっきりした形式はありませんが、主題は2つの要素が 変化を与えられつつ交互に登場するので、いくらかロンドに近い感じです。最後は、テンポを速めて、駆け巡るようなピアノの楽想を繰り広げ、全合奏の強打で幕を閉じます。 この印象的な軍楽的でにぎやかな終結部は、ラフマニノフ作品の典型的手法で、「ラフマニノフ終止」と呼ばれています。

I.T.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2009