エドヴァルド・グリーグ(1843-1907) はノルウェー
を代表する作曲家である。今回演奏する組曲「ペール
ギュント」(1876 年2 月ノルウェーのオスロにて初演)
の他にはピアノ協奏曲などが有名である。弦楽器弾き
にとっては「ホルベアの時代から」や「二つの悲しい
旋律」などの弦楽合奏曲も心に残る美しい曲である。
「ペールギュント」はノルウェーの劇作家イプセン
が書いた戯曲の付随音楽として作曲され、全26
曲か らなる。原曲は合唱やバリトン/ ソプラノのソロが入っ
ているが、その後グリーグ自身の手でこの中から4
曲 ずつを選んでオーケストラ用に改作した二つの組曲が
世間では有名である。
戯曲についてあらすじを書くと
ノルウェーの山村にペールギュントというほら吹きの
若者がいた。彼はソルヴェイグという幼馴染がいたにも
かかわらず他人の結婚式で花嫁を強奪して、冒険の旅に
出る。一度帰郷してソルヴェイグと一緒になるが、母親
の死をきっかけにまた冒険の旅に出る。数度にわたって
大金持ちになったり一文無しになったりジェットコース
ターのような人生を送ったあと、老年になったペールギュ
ントは故郷に戻る。そこには一途に彼を思うソルヴェイ
グが待っており、最後は彼女の子守唄を聞きながら安ら
かに死ぬ。というものである。正直ペールの生き方は良
い子には真似してほしくないが、ペールギュントの音楽
は良い子にも心地よく響く美しい音楽である。
「朝の気分」
原曲では第4 幕の最初に演奏される。大金持ちに
なったペールギュントがやってきたモロッコの海岸
でのすがすがしい朝の気分を描いた有名な曲。しか
し劇中ではこのあとすぐに詐欺師の食い物になって
全財産を失ってしまうのである。
「山の魔王の宮殿にて」
第2 幕で演奏される。親しくなった若い女性に
連れて行かれた実家が山の魔王の宮殿で、そこで
ペールは娘が実は山の魔王の娘であることを知る。
山の魔王から娘との結婚を迫られるがペールは
断って逃げようとする。この曲は逃げようとした
ペールが山の魔王の手下に追い詰められる場面で
演奏される。
「ソルヴェイグの歌」
第4 幕最後で演奏される。ペールの帰郷を待ち
わびるソルヴェイグの心境を描写したもので、原
曲ではソプラノ独唱で歌われる。このよきソルヴェ
イグはすでに中年。しかも第3 幕でペールは彼女
を捨てて出て行ってしまっているのである(しか
も旅先では数々のやんちゃな行為をしているのだ
が)。ソルヴェイグは本当に優しいのか、それとも
ただのお人よしなのか...
K.M.