「タイスの瞑想曲」で有名なジュール・マスネは1842年フランスで生まれた。母親からピアノの手ほどきを受け、1853年11歳でパリ国立高等音楽学校へ入学している。生活費のためにカフェでピアノ演奏、テアトル・リリック(オペラ座やオペラ・コミックに並ぶオペラ劇場)で打楽器奏者として働きながら1862年若手作曲家の登竜門であるローマ賞を受賞、奨学金を得てローマへ留学することになった。留学後はパリへ戻るがその後普仏戦争に兵士として従軍し、1871年に戦争が終わると創作活動を再開した。その後1878年から弱冠36才でパリ国立高等音楽院の教授を務めている。
マスネは、「ウェルテル」「タイス」などのフランスオペラで有名だが、オーケストラ組曲の先駆けとしても知られている。マスネは全部で8つの組曲を作曲しているがそのうち7曲に番号がついており、以下のように2番から7番までは表題がついている。
第2番「ハンガリーの風景(Scenes hongroises)」
第3番「劇的風景(Scenes dramatiques)」
第4番「絵のような風景(Scenes pittoresques)」
第5番「ナポリの風景(Scenes napolitaines)」
第6番「おとぎの国の風景(Scenes de feerie)」
第7番「アルザスの風景(Scenes alsaciennes)」
この題名を見るだけでも音楽の一部が想像できそうである。よく演奏されるのは、第7番「アルザスの風景」と本日演奏する第4番「絵のような風景」である。
マスネの曲はどれも美しくわかりやすいメロディで構成されているがこの曲も例外ではない。組曲は次の4つの部分からなっている。
1.Marche(行進曲)
2.Air de Ballet(バレエの調べ)
3.Angelus(夕べの鐘)
4.Fete Boheme(ジプシーの祭り)
ちょうどミレーやルソーなどのバルビゾン派(パリの南郊、フォンテーヌブローの森のはずれのバルビゾン村に住み着いた画家の一派)が同時代のフランスの画家として活躍し、風景画を描き続けていた時代である。マスネも当時のミレーの「晩鐘」をみて3曲目「Angelus」を書いたのでは、と勝手に想像したりするのも楽しい。このように絵にかかれたヨーロッパの風景を思い浮かべながら聴いていただければと思う。
M.T.