曲目紹介

モーツァルト  歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲 K.527


 モーツァルトの曲を積極的に演奏してきた東芝フィルハーモニー管弦楽団であるが、歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の序曲を演奏するのは今回が初めてになる。
 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」は、「フィガロの結婚」「魔笛」と並ぶ3大傑作と言われている。1787年にプラハで「フィガロの結婚」が絶賛され、プラハの劇場主ボンディーニの依頼を受けて作成された。全二幕の喜歌劇で、ウィーンの脚本家ロレンツォ・ダ・ポンテと相談し題材を決めたということで、1787年4月にダ・ポンテの台本が完成、8月には大部分の作曲が完了し、10月にプラハで初演され喝采を得ている。
 物語は、古くからヨーロッパに伝わるスペインの「ドン・ファン」の伝説に基づいており、ティルソ・デ・モデリーナの戯曲「セビリャの色事師と石像の客」から取材され、ジョヴァンニ・ベルターティの手による「石の賓客」の台本の一部が転用されている。
 好色な若い貴族ドン・ジョヴァンニは従者レポレロを引き連れて、騎士長の娘ドンナ・アンナ、かつての恋人ドンナ・エルビラ、村の若い花嫁ツェルリーナなど次々に誘惑するが、最後には、娘を助けるためドン・ジョヴァンニと決闘して命を失った騎士長の石像が彼を地獄へ落とし、全員が「悪業の最後はこの通り」と歌って幕となる。
 序曲は、二分の二拍子で書かれた緩やかなニ短調導入部を持つ、ニ長調のソナタ形式で、導入部は騎士町の石像が宴席に現れる時の音楽が使用されている。その後、急速な明るい主部となり、歌劇では序曲の最後は静かに第1幕につながってゆくが、序曲のみ鑑賞できるようモーツァルト自身によって演奏会用のコーダが作曲されている。

A.I.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2005