曲目紹介

チャイコフスキー  バレエ組曲「くるみ割り人形」 作品71a


 バレエ「くるみ割り人形」は1890年マリインスキー劇場がチャイコフスキーに作曲依頼をして作曲された。当初チャイコフスキーは振付師プティパによりテンポ、リズム、小節数、転調の位置など事細かに指示された制約づくめの作曲にうんざりし、あまり気がのっていなかったようである。しかし、同じくプティパと組んで作曲したバレエ「眠れる森の美女」で成功を収めていたこともあり作曲を引き受けることにした。
 そして1892年にバレエの初演を迎えることになるが、初演は失敗に終わっている。しかし、失敗の原因はチャイコフスキーの音楽というよりも台本の不備により物語としてまとまりを欠いたというところが大きかったようである。組曲版はバレエ初演に先立ち演奏され、好評を博していた。バレエ初演時の観客の拍手はもっぱらチャイコフスキーの音楽に対してのみであった。
 当初評価が低かったバレエ「くるみ割人形」だが1934年のワイノーネンによる新演出によりその真価を世に広めることになる。今日では絶大な人気を誇る演目となりクリスマスシーズンには世界中の劇場で上演されている。
 組曲版はバレエ版よりチャイコフスキー自身が8曲を抜粋、編曲したものである。

1. 小序曲
 クリスマスパーティーが始まる前のうきうきした気持ちを表すかのような軽やかな曲である。

2. 行進曲
 クリスマスパーティーへ子供たちが入場して来る時の音楽。子供達の無邪気な様が表されている。

3. こんぺい糖の踊り
 当時発明されたばかりのチェレスタを用いた幻想的な曲である。

4. トレパーク
 トレパークとはロシアの民族舞踊。激しい踊りの曲である。

5. アラブの踊り
 コーヒーの精の踊り。ものうげな東洋的な音楽である。

6. 中国の踊り
 お茶の精の踊り。フルートが高音でころがり、弦楽器がピッチカートでアクセントを加える。

7. 葦笛の踊り
 3本のフルートがかわいらしくアンサンブルしていく。中間部ではトランペットによりアクセントが加えられる。

8. 花のワルツ
 全ての花が踊りだす、美しく喜びに満ちたワルツである。

Y.K.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2005