曲目紹介

マスカーニ 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より交響的間奏曲


 ピエトロ・マスカーニ(1863-1945)はパン屋の次男として生まれ、親は法律家にしたかったようですが、叔父の支援を受け、14歳でケルビーニ音楽学校に進みます。19歳でミラノ音楽院に進みますが、指導者たちと合わず、成績もよくなかったため中退してしまいます。その後、劇場オーケストラのチェロ奏者、指揮者として活動し、作曲も進めていましたが評判にはならなかったようです。1884年、ジョヴァンニ・ヴェルガの戯曲「カヴァレリア・ルスティカーナ」に触発され、出版社の懸賞オペラにこの題材で挑むことを決意、これは見事に入賞を果たします。入賞作品の順位は公演で決められることになっていたので、1990年に初演が行われ、聴衆が騒ぎ出すほどの熱狂的な成功を収めます。26歳の若き作曲家は、一夜にして国内外に名を轟かせます。その後何曲かのオペラを作曲し、成功していますが、「カヴァレリア・ルスティカーナ」ほどの成功は得られませんでした。
 一方、指揮者としての活動は順調で、米国への演奏旅行など精力的にこなし、アルトゥーロ・トスカニーニの後任としてミラノ・スカラ座の首席指揮者にもなっています。マスカーニの演奏活動は激動の時代にあって、政治的な関わりから逃れられず、ムソリーニ政権に協力したという廉により、戦後、財産を没収されてしまいます。晩年はローマのホテルで妻と寂しく暮らし、1945年の8月に死去しています。葬列を送った曲は、本日演奏する「カヴァレリア・ルスティカーナ」の「交響的間奏曲」でした。
 オペラの題名は「田舎の騎士道」という意味で、実話に基づいた恋愛、不倫を題材にした物語です。当時流行したヴェリズモ(真実主義)という、実話を言葉遣いまでリアルに描写する作風の小説が基になっています。
【あらすじ】
主人公トゥリッドゥは恋人サントゥッツァがありながら、昔の恋人ローラと不倫の関係にあります。ローラはトゥリッドゥが軍隊に行っている間に、いまの夫アルフィオと結婚していたのです。どうしてもトゥリッドゥが戻ってこないことからサントゥッツァは嫉妬に駆られ、アルフィオにトゥリッドゥの不倫を告げてしまい、アルフィオは怒り狂います。「交響的間奏曲」はこの場面の後に奏されます。このあと、教会から人々が出てきて居酒屋で皆が飲んでいるときに、トゥリッドゥはアルフィオに決闘を申し込みます。敗れて死ぬことを予感したトゥリッドゥは母親にさりげなく別れを告げに帰り、やがて意を決し決闘場へと向かいます。
(参考文献 武田 好「イタリアオペラを原語で読む
カヴァレリア・ルスティカーナ」、
中河 原理 監修「クラシック作曲家辞典」)

T.O.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2004