曲目紹介

バーンスタイン 歌劇「キャンディード」序曲


 レナード・バーンスタイン(1918-1990)はユダヤ系ロシア人の移民の子としてマサチューセッツ州ローレンスに生まれました。10歳からピアノを始め、ハーヴァード大学、次いでカーティス音楽学校でフリッツ・ライナーなどに師事します。若い頃はピアニストとして、室内楽や歌曲の伴奏などで優れた演奏を残し、指揮では師のライナーとは正反対の、情熱的で大きなアクションやテンポの変更が特徴でした。1943年にニューヨーク・フィルの副指揮者になったバーンスタインは、2ヵ月後に大きなチャンスをものにします。急病のブルーノ・ワルターに代わって演奏会を成功に導いたのです。この成功でバーンスタインは全米各地のオーケストラから招待され、ニューヨーク・フィルでも指揮する機会を与えられます。その後の各国での指揮やTV番組でのクラシック啓蒙など、活動は多岐に渡っています。一方、作曲活動はブロードウェイを中心に好評を博しますが、一部の評論家からは「広く浅くやりすぎて中途半端」という批判を受けます。実際、バーンスタインの近くにいた人たちの証言では、酒・タバコ・男女関係もろもろ、バーンスタインは何事も型破りで、発展家であったそうです。自身も、指揮者か作曲家というカテゴリー分けを嫌い、パスポートの職業欄には「音楽家」と書いていました。もちろん、これらのことが彼の音楽、演奏活動の価値に影響するものではないことは言うまでも無いでしょう。
 「キャンディード」はオペラと称されたりミュージカルと言われたり資料によって名称が異なりますが、何しろ作曲者自身がボーダレス思考の人なので、ここでは特定しません。初演は1956年ブロードウェイで行われ、バーンスタインがブロードウェイで唯一失敗した作品、と後に言われることになります。しかし、80日で降ろされたから失敗、というあたり、アメリカのミュージカル界は厳しいですね。さておき、曲には自信があったバーンスタインはその後も改訂を続け、1989年(死の前年)までこの曲は手を入れられ、「全米中の人が制作に関わった」などと揶揄されています。
【あらすじ】
 主人公キャンディード青年の人生の話。楽天的に生きることを教えられていたキャンディードは、大地震、宗教裁判など苦行を経験し、やがて楽天主義は誤りで、人生あるがままに、幸せや苦難を受け入れながら生きるべきだと悟ります。
 明日、4月26日から5月11日まで、東京国際フォーラムで、「キャンディード」が上演されます。興味のある方は観に行かれてはいかがでしょうか。
(参考文献 W.W.バートン編「バーンスタインの思い出」、
中河 原理 監修「クラシック作曲家辞典」)

T.O.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2004