曲目紹介

モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲 K620



 多彩な様式を見せるモーツァルトの歌劇の中で、「魔笛」は音楽の間を台詞でつなぐジングシュピールという一つの様式に属するものであるが、イタリア風オペラ調あり、ドイツ風歌曲調ありと、既存歌劇の様々な要素が盛り込まれ、それぞれが密接に関係しあっている総合的な古典歌劇である。また、この歌劇は彼の作品の中で唯一ドイツ語で書かれたものである。
 「魔笛」の台本は劇場興行師であり、モーツァルトの知人でもあったエマニュエル・シカネーダにより書かれ、その内容は当時彼やモーツァルトが属していた秘密結社、フリーメイスンの儀式や思想と深い関わりがあると言われている。台本のあらすじは、
「王子タミーノは、狩の途中で大蛇に襲われ、夜の女王の侍女たちに助けられるという事件をきっかけに、支配者ザラストロに誘拐されている女王の娘、パミーナを助けに出かけることになる。鳥刺しパパゲーノを伴い冒険の旅に出たタミーノは、女王から送られた魔法の笛(このオペラの標題の由来となる)の不思議な力で幾多の試練を乗り越え、最後にはパミーナを助け出し、彼女と結ばれる。」
 モーツァルトはこのウィーンにおいて、この「魔笛」を1791年の夏の数か月の間で書き上げている。本日演奏される序曲はこの歌劇の制作過程において、第2幕冒頭部「僧侶たちの行進」と共に最後に作曲され1791年9月に完成した。緩急2つの部分からなるソナタ形式で構成されており、主題部と展開部が主にフーガ的に取り扱われているのがこの曲の特徴をなしている。導入部及び展開部冒頭においてアダージョで奏される和音は、それぞれ女性フリーメイスン、男性フリーメイスンを暗示している象徴的音形だと考えられている。

Y.K.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2002