曲目紹介

ベートーヴェン 「エグモント」序曲



 1810年ウィーン宮廷歌劇場で初演されたゲーテの戯曲「エグモント」のために10曲の劇付随音楽が作曲されていますが、その中の序曲を本日のオープニングとして演奏します。
 戯曲エグモントは実在した軍人/政治家であるラモラル・エグモントというオランダの英雄をモデルに描いたもので、物語は16世紀にスペインの圧制に苦しむオランダの民衆を救おうとエグモント伯爵が独立運動を指導し立ち上がります。しかし、捕らえられて死刑を宣告されてしまうのですが、獄中で自殺したクレートヒェンという愛人が自由の女神として彼の前に現れ勇気と正義を祝福します。すると伯爵は自分の死は無駄ではないと目覚めて敢然と死につくという悲劇的な英雄の生涯を表現した物語です。
 エグモント序曲はオーケストラの全奏とそれに続く弦楽器群による力強くゆったりとした序奏により始まりますが、オーボエとそれに続く管楽器による暗い主題が現れ、のちの悲劇を予感させます。テンポが早くなるとバイオリンとチェロに始まる弧を描くような動きが楽器と形を変化させながら繰り返し提示されるとともに、序奏の名残も現れて悲劇的な英雄であるエグモントが表現されます。最後はピアニシモで静かになった後、フォルテシモまで盛り上がり自殺するクレートヒェンと処刑されるエグモント伯爵の愛と正義を称える勝利の音楽として終わります。
 さて、今日のプログラムは独仏露と多国籍です。楽譜にはドイツらしく・・というような注記は当然ありませんが、演奏にはお国柄が響きや音色として出てしまうものです。具体的にドイツの響きはこうということは一言では言えませんが、3国の違いを自分なりにイメージしながら聴いてみると面白いですよ。

K.N.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2002