「劇場支配人」は、1786年1月から2月にかけて、「フィガロの結婚」の作曲中に書かれた1幕の音楽付き喜劇です。
物語は、劇場支配人がザルツブルクでの興行を目的に劇団の組織を計画しているところから始まります。そこに自薦、他薦の俳優や歌手がやってきてテストを受けますが、2人の歌手は「私がプリマ・ドンナよ」と言い争いになり、仲裁役として男性歌手が入っても双方全く譲りません。テンヤワンヤになって、劇場支配人は仕方なく劇団づくりの中止を宣言しますが、やがて芸術の名誉のために皆が若いし、大団円となり幕を閉じます。
序曲は、「フィガロの結婚」の序曲と肩を並べるもので、クラリネット2本、ファゴット2本を含む2管編成となっていて、こうした劇の序曲としては規模の大きいものです。
交響曲の第一楽章にみられるような厳格なソナタ形式にもとづいて、まず、第一主題が総奏によって強弱の対象をもって呈示されます。ヴァイオリン二部がこの部分を引き継いで活発に終わると、属調の第二主題が第一ヴァイオリンで、木管や低音弦にも彩られて現れます。オーボエ、ファゴット、ついでヴァイオリンがつづける音形に受け継がれた後、第一主題が姿を現して展開部に入り、この主題が中心に扱われてから再現部へと導かれます。第二主題も主調に戻って再現してから、第一主題の音形が使われて、華々しく終わります。
M.T.