曲目紹介

モーツァルト:交響曲第39番 変ホ長調 KV543



 5歳から作曲を始め、神童と呼ばれたモーツァルト。彼は36歳を目前に謎の死を遂げるまでに、数々の不朽の名作を残しました。
 1788年、モーツァルトはわずか2ヶ月くらいの短期間に、彼の最大傑作として数えられる三つの交響曲を続けざまに書き上げています。この変ホ長調はその第一作。モーツァルトはこの頃、貧窮と生活の苦悩の間にあったのにもかかわらず、この曲は彼の作風を代表するような幸福感と、明るい生の愉悦に満ちています。

第一楽章 アダージョアレグロ 変ホ長調 四分の四拍子〜四分の三拍子
 力強いAdagioの序奏によって始まり、続いてAllegroの第一主題がヴァイオリンの主奏で現れます。品格を備えたその主題旋律は、この交響曲の性格を表しています。ことに間も無く金管によって強く奏でられる新しい動機は、ベートーヴェンの「英雄」交響曲の主題を思わせます。第二主題は、歌謡風の優雅なもので、展開部は短く簡略で、闘争的な重厚さは見られません。

第二楽章 アンダンテ 変イ長調 四分の二拍子
 Andanteは、行進曲風の基本主題に基づく展開部のないソナタ形式で、規則的なリズムが一貫して流れます。続いて不安げにヘ短調で始まる間奏を経て、第二主題が変ホ長調で現れ、これは毎小節楽器を換えてカノン風に展開されます。やがて第一主題の再現によって再び平和が取り戻されます。

第三楽章 メヌエット アレグレット 変ホ長調 四分の三拍子
 Allegrettoは、もとも豪華な宮廷の舞踏を思わせるメヌエットで、歯切れのよい リズムと優雅なメロディーが一貫しています。このメヌエットは、モーツァルトの数多いメヌエットの中でも傑作であるといわれ、単独に「モーツァルトのメヌエット」として広く演奏されています。

第四楽章 アレグロ 変ホ長調 四分の二拍子
 軽快なAllegroで、ロンド風の軽やかな主題が、ヴァイオリンで奏でられる愛らしい第二主題とともにソナタ形式で発展します。コーダは特に活気に満ちたものです。


K.Y.


© 東芝フィルハーモニー管弦楽団 2002